マッサンやで。
ウイスキーづくりで唯一、人間やのうて微生物が主役の工程がここや。発酵。
糖化でできた甘い麦汁に酵母を入れたら、発酵が始まる。
ぱっと見、あとは待つだけに見える。せやけどどの酵母をどれだけ入れるか、何℃から始めるか、何時間待つかで、取れる酒の量も香りも変わるんや。
なかには、アルコールづくりがほぼ落ち着いたあともあえて何日も待つ蒸溜所がある。なんでやろ? そこがこの工程のおもろいとこやで🥂
※この記事はスコッチのモルトウイスキーで一般的な発酵を軸に解説するで。グレーンやバーボン、アイリッシュでは、麦汁の濃さ・酵素・設備・温度の管理が変わることがある。
🥃 一言結論
発酵=糖化でできた麦汁に酵母を入れて、糖をアルコール・炭酸ガス・いろんな香りの成分に変える工程や。
スコッチではふつう2〜3日(48〜72時間)で、アルコール度数7〜9%くらいのもろみ(ウォッシュ)になるで。
おもろいのが、アルコールを作る主発酵は30時間ほどで大きく進んでまうっちゅうこと。それでも止めへん蒸溜所があるんは、そのあと乳酸菌などの働きで香りのもとが増えるからや。
ここまでの流れはビールづくりとよう似とる。ちがうんは、この液体を飲まんと次で蒸溜してまうとこやな🥂
🦠 何が起きとるん?|酵母が糖を食べる
冷やした麦汁をウォッシュバックっちゅう大きなタンクに移して、酵母を入れる。 あとは酵母が糖を食べて、アルコールと炭酸ガスを出してくれるのを待つ。
使う酵母の中心は、パンやビールと同じサッカロミセス・セレビシエっちゅう種類や。ただし同じ種類でも株によって、糖を食べる力も出す香りもちゃうで。
ここ、ワイも勘違いしとった。「昔はビール工場の酵母を使うとった」だけやないんや。
蒸溜専用の酵母は1920年代には商品になっとって、1970〜80年代のスコッチは「専用の蒸溜酵母+ビール工場から回収した酵母」の併用がふつうやった。回収した酵母を足すと、量も香りの複雑さも稼げたんやな。
それが1990年代の終わりから2000年代半ばにかけて姿を消していく。スコットランドの大きなビール工場が次々閉まって手に入りにくくなったし、品質も安定せんようになったからや。
いまは市販の蒸溜用酵母が主流。ただし香りや伝統を狙ってビール酵母を併せて使う例も、少しは残っとるで。
※スコッチのモルト発酵は、ずっと冷やして一定に保つんやのうて、最初の温度を決めて、そのあとの上がり方を任せるやり方が多い。酵母を入れるときに16〜18℃にしといたらゆっくり進むし、20〜22℃なら速く立ち上がる。そこから発酵熱でどんどん上がって、ピークは34℃前後になる。
つまり「温度を見てへん」のとちゃう。最初の一手で、そのあとの温度の道筋を決めとるんやで。
🗣️ マッサンの一言(独断・偏見・妄想込み)
ワイ、この工程がいちばん人間味があって好きやねん。
造り手が決めるんは、酵母と、その量と、始める温度と、待つ時間。そこまで決めたら、あとは微生物の仕事や。
何十年も設備を磨いてきた職人が、最後は目に見えん相手に段取りだけ渡して見守っとる。ウイスキーがロマンの酒やと言われるんは、こういうとこやと思うで🥂
⏳ わざと長く発酵させる|主発酵が落ち着いたあとも待つ理由
ここがこの記事でいちばん書きたかったとこや。
実は30時間ほどで、アルコールを作る仕事は大きく進んでまう。量だけで言うたら、このへんで蒸溜に回してもええんや。
ただし「糖を食べ尽くした」わけやないで。ここがおもろいとこでな。
なくなるんは酵母が食べられる糖だけ。酵母が扱えん糖(デキストリンやペントースっちゅう仲間)は、まだ残っとるんや。
ほんで進み方も、麦汁の中身や酵母の株や温度でちゃう。「30時間でぴたっと止まる」わけやないで。
それでも止めへん蒸溜所がある。理由はこれや。
乳酸菌は、酵母の仕事が終わってから急に現れるんやない。
麦汁や酵母、蒸溜所の設備から入り込んで、最初から少しずつ居る。ただ序盤は酵母の勢いに押されて、あんまり増えられへんねん。
それが40時間あたりから——酵母の勢いが落ちてくると、いよいよ増え出す。ほんで、さっきの酵母が食べ残した糖や、力を使い切った酵母そのものを食べて、乳酸や酢酸などを作っていくんや。
この乳酸の一部が、次の蒸溜でアルコールと結びついて乳酸エチルっちゅう香りの成分になる。長く発酵させた酒のほうがこういう成分が多い、っちゅう研究もあるで。
※ただし「乳酸菌が増えたら必ず果実っぽくなる」と単純には言えへん。種類や量によっては、酸っぱさや青っぽさのほうへ振れることもある。
| 蒸溜所・地域 | 発酵時間 | ひとこと |
|---|---|---|
| アイラ島のだいたいの目安 | 50〜60時間 | キルホーマンが「アイラの平均」として紹介しとる数字 |
| キルホーマン(アイラ島) | 90時間 | アイラでいちばん長いと自ら言うとる |
| グレン・スコシア(キャンベルタウン) | 平均128.8時間 | 5日以上。「遅いほどええ」と公式に書いとる |
| ラッセイ島 | 3日と5日 | 2種類を作り分けとる |
ざっくり言うと、短めの発酵は麦芽や酵母から来る力強さが残りやすい。長い発酵は乳酸菌などの働きで酸やエステルが増えて、果実を思わせる複雑さにつながることがある。
ただし発酵時間だけで酒の味が決まるわけやない。酵母、麦汁、温度、微生物、そして蒸溜のどこを取るか——ぜんぶ足し合わさって原酒になる。
それでも「何時間待つか」は、味の設計の大事な一手やねん。
🗣️ マッサンの一言(独断・偏見・妄想込み)
「遅いほどええ」って公式サイトに書いとる蒸溜所を見たとき、ワイはちょっと笑ってもうた。
ふつうの商売やったら「早いほどええ」やろ? タンクは早く空けたいし、量も作りたい。
それを逆に振って、5日以上も待つ。効率で言うたら損なのに、味のために粘る。こういう頑固さが、飲んだときの「なんかちゃうな」の正体やと思うねんな🥂
🍺 ビールとの分かれ道
糖化から発酵まで、流れはビールづくりとよう似とる。実際、蒸溜所の人もこの液体を 「ディスティラーズ・ビール」と呼ぶことがある。
| 一般的なビール | スコッチのモルトウイスキー | |
|---|---|---|
| ホップ | 使う | 使わへん |
| このあと | そのまま飲みもんに仕上げる | 蒸溜する |
| 麦芽の酵素 | 煮沸で活性を失っとる | 一部が活性を残して、発酵中も糖化に関わる |
| 温度 | 冷やしながら一定の幅に保つことが多い | 投入温度を決めて、自然な上がり方を使うことが多い |
| 乳酸菌 | ふつうは抑える(サワービールなどは例外) | 発酵の後半の働きが、香りに役立つことがある |
とくに最後がおもろい。ビールづくりでは乳酸菌の混入をきっちり抑える——ただしサワービールみたいに、あえて使う世界もあるけどな。
いっぽうスコッチのモルト発酵では、後半のかぎられた乳酸菌の働きが香りに役立つことがある。同じ微生物が、行き先によって扱いが変わるっちゅうわけやな。
※ただし「乳酸菌なら何でも歓迎」やない。早いうちに増えすぎたら酵母と餌を取り合うて、取れるアルコールが減ってまう。酵母の主発酵が十分に進んだあと、穏やかに増えるのがええんやで。
🤔 よくある質問
Q. もろみは飲めるん?
A. 度数7〜9%でホップの入ってへんビールみたいなもんやから、液体としては飲める状態になっとる。味は酸っぱさや酵母っぽさ、穀物っぽさが強いこともあるで。
ただしウォッシュは飲みもんとして仕上げたもんやない。蒸溜所の許しなく発酵槽から飲むようなもんやないで。
Q. 発酵が長いほど美味しいん?
A. 長いほど果実っぽい香りが出やすい傾向はあるけど、「長い=美味い」と単純には言えへん。
短い発酵の穀物っぽい厚みが好きな人もおる。蒸溜所は狙う味に合わせて時間を決めとるんや。
Q. どんな酵母を使うかで味は変わる?
A. 変わるで。24種類の市販酵母を比べた研究でも、果実っぽさ・甘さ・硫黄っぽさやエステルの量にちゃんとちがいが出とる。
せやから蒸溜所は酵母を選んどる。何種類か試して決めた、と公式に書いとるとこもあるし、複数の酵母を組み合わせて、量と香りの両方を狙う例もあるで。
Q. 発酵でウイスキーの度数7〜9%? 40%はどこで?
A. 度数を上げるんは次の蒸溜や。
ほんで、ここは覚え方に気をつけてな。「酵母が自分のアルコールに負けて7〜9%で止まる」わけやないで。蒸溜用の酵母は14〜15%くらいまで耐える力を持っとる。
7〜9%になるんは、もとの麦汁に入っとる糖の量と、酵母の働きや発酵の条件で決まるからや。
そのもろみを蒸溜してアルコールと香りを選び取り、樽で寝かせて、必要なら水を足して40%以上で瓶に詰める。そういう順番やねん。
🎁 まとめ:待つことが、味を作る
発酵は、麦汁に酵母を入れて、糖をアルコール・炭酸ガス・香りの成分に変える工程。
スコッチではふつう2〜3日で7〜9%のもろみになる。ただし90時間や5日以上かける蒸溜所もあるで。
造り手が決めるんは酵母と量と温度と時間。そこから先の主役は微生物やねん。
ほんで、この工程のいちばんの妙は「落ち着いてからも待つ」とこや。
アルコールを作る仕事は30時間ほどで大きく進む。そのあとも続けると乳酸菌などの働きが目立ってきて、酸や香りのもとが増えていく。
ただ長く置けばええわけでもない。早いうちに乳酸菌が増えすぎたら、取れる酒が減ってまうからな。
酵母・温度・時間・微生物の釣り合いを取って、欲しい原酒に近づけていく。それが発酵やねん。
🗣️ マッサンの一言(独断・偏見・妄想込み)
今日いちばん言いたいのはこれや。ウイスキーは「時間を味方につける酒」やねん。
発芽を待つ、発酵を待つ、熟成を待つ。ただ放っとくんやのうて、温度や様子を見ながら急がせずに待つ。
早めることはできても、早いほうがええとは限らへん。その遠回りを何百年も続けてきたんが、この酒の凄みやと思うで。ほな、乾杯🥂

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