マッサンやで。
ウイスキーの作り方でいちばん地味やのに、いちばん化学っぽいんがここや。糖化(マッシング)。
麦芽の中身は、まだ大半がデンプンや。そのままやと、酵母には大きすぎて食べられへん。
そこで温かい湯と酵素の出番やねん。デンプンを酵母が食べられる糖に変えて、甘い麦汁として取り出す。
湯の温度ひとつで、取れる酒の量まで変わってくる。地味やけど、ここが働かんと酒にならへん工程やで🥂
※この記事はスコッチのモルトウイスキーで一般的な糖化を軸に解説するで。グレーンやバーボン、アイリッシュでは、使う穀物や設備、酵素のルールが変わることがある。
🥃 一言結論
糖化(マッシング)=砕いた麦芽を温かい湯と混ぜて、酵素がデンプンを糖に切り分ける工程や。
製麦で増えた酵素(=デンプンを切る”はさみ”)が、ここで本気を出す。
麦芽の時点でも糖は少しできとるんやけど、それを一気に増やして、甘い麦汁(ウォート)として液体で取り出すのが糖化やねん。この麦汁が次の発酵で酒になる。
湯の温度が肝で、ぬるすぎたら反応が進みにくいし、熱すぎたら酵素が働けんようになる。せやからスコッチのモルト蒸溜所では、温度のちがう湯を数回に分けて使うやり方がよう見られるで🥂
🔪 何をしとるん?|”はさみ”が本気を出す
大麦の胚乳には、デンプンがたっぷり詰まっとる。デンプンはブドウ糖が長い鎖みたいにつながったもんで、このままやと酵母には大きすぎて食べられへん。
そこで製麦の段階で、大麦に芽を出させて酵素(アミラーゼ)を増やしてもらう。
ほんで、ここが誤解されやすいとこやねん。発芽の間にも、デンプンの分解はちょっと始まっとる。大麦の糖分は約2%やのに、発芽を終えた麦芽では約8%まで増えとるんや(デンプンは約63%→約58%に減る)。
つまり麦芽は、もうほんのり甘い。ワイもここは勘違いしとったわ。
※数字はモルト業界でよう挙げられる目安や。大麦の品種や製麦の具合でちがうで。
せやけど中身の大半は、まだデンプンのままや。それを一気に糖へ変えて、液体として取り出すのがこの糖化やねん。
砕いた麦芽(グリスト)をマッシュタンっちゅう大きな桶に入れて、温かい湯と混ぜる。すると酵素がデンプンの鎖をパチパチ切って、酵母が食べられる小さな糖にしていく。
🗣️ マッサンの一言(独断・偏見・妄想込み)
ワイ、この工程の名前を初めて聞いたとき「糖化ってなんやねん」ってピンとこんかった。
知ってびっくりしたんは、ここでできた糖はグラスまで残らへんっちゅうこと。次の発酵で、酵母がきれいに食べてまうねん。
それでも、ここで糖を作れへんかったらアルコールも発酵の香りも生まれへん。裏方に見えて、実は献立を組んどる料理長やったわけや🥂
🌡️ 温度が肝|ぬるすぎもアカン、熱すぎもアカン
酵素は生き物やない。温度で働き方が変わるタンパク質や。
しかも種類によって得意な温度帯がちゃうねん。長い鎖をざっくり切るαアミラーゼと、切った先から糖を作るβアミラーゼ。この2人の働きどころが少しズレとる。
| 温度 | どうなる |
|---|---|
| 低すぎる | 反応が遅くて、糖化が進みにくい |
| 狙いの温度帯 | 複数の酵素が働いて、デンプンが糖に変わっていく |
| 高すぎる | 酵素が形を崩して働きが落ちる。もう戻らへん |
ほんで、この「狙いの温度」の当て方がおもろい。1回で終わらせんと、数回に分けて注ぐんや。
スコッチのモルト蒸溜所で見られる一例
| 回 | 主な役どころ | 温度の考え方 |
|---|---|---|
| 1番水 | 糖化の本番。酵素にデンプンを切ってもらう | グリストと混ざったあとが約63〜65℃になるよう調整 |
| 2番水 | 麦芽の層に残った糖を回収する | 1番水より高い温度の湯を使う |
| 3番水 | 残りをさらに洗い出す(スパージ) | さらに高温。次の仕込みに回すこともある |
※回数も温度も蒸溜所によってちがう。たとえばグレン・スコシアは66℃→76℃→85℃の3回で、1回の仕込みに約8時間かけとる。
ほんで大事な注意——「注ぐ湯の温度」と「グリストと混ざったあとの温度」は別の数字や。1番水は65〜70℃くらいの湯を注いで、冷たいグリストと混ざって63〜65℃に落ち着く、っちゅう書き方もある。よそで見た数字とズレとっても、間違いとは限らへんねん。
🗣️ マッサンの一言(独断・偏見・妄想込み)
ここでワイが感心したんが、最後の湯を捨てへん蒸溜所があるっちゅう話や。
3番水には、まだ糖が残っとる。せやからホットリカータンクっちゅうタンクに戻して、次の仕込みの1番水に回すねん。
もったいないもんは使う。何百年もそうやってきた現場の知恵やと思うで🥂
🍺 一般的なビールとのちがい|スコッチの麦汁は煮沸せえへん
糖化はビールづくりにもある工程や。ほんでここが分かれ道になる。
| 一般的なビール | スコッチのモルトウイスキー | |
|---|---|---|
| 麦汁の煮沸 | する(ホップを入れて煮る) | ふつうはせえへん |
| 酵素はどうなる | 煮沸で失活する | 一部が活性を残したまま発酵タンクへ行く |
| そのねらい | ホップの苦味を引き出し、麦汁を殺菌して安定させる | 発酵中も糖化を進めて、取れる酒を増やす |
スコッチのモルトウイスキーは、麦汁をふつう煮沸せえへん。せやから麦芽由来の酵素の一部が、活性を残したまま次の工程へ運ばれる。
ほんで発酵の間も残ったデンプンの分解が進んで、酵母が食べる糖をじわじわ足してくれるんや。
麦芽から取れるアルコールを、できるだけ無駄なくするための仕組みやで。
⚖️ 産地のちがい|外部の酵素を足してええか
ここに、笑えるくらいはっきりしたちがいがある。
スコッチのルールでは、糖化に使えるんは麦芽が自分で持っとる酵素だけ。外から酵素を足すことは認められてへん。
いっぽうアイリッシュの基準は、麦芽の酵素にくわえて「ほかの自然な酵素」を使うことも認めとる。
すぐ隣の島でも、使える”はさみ”の種類がちゃうねん。
もちろん、これだけで味が決まるわけやない。せやけどルールブックを読むと、造りの考え方まで見えてきておもろいやろ。
🤔 よくある質問
Q. 糖化って、麦芽を煮とるん?
A. 基本的には煮てへんで。温かい湯と混ぜて、酵素が働きやすい温度をキープしとるんや。沸騰するほど熱くしたら酵素が働けんようになる。「ちょうどええ温度の湯に浸して待つ」——それが糖化やねん。
Q. 麦汁ってどんな味?
A. 麦から来たやさしい甘さのある液体や。ホップを入れてへんから、ビールみたいなホップ由来の苦味はないで。
ただし、この糖がそのままウイスキーの甘さとして残るわけやない。次の発酵で、アルコールと香りのもとに変わっていくんや。
Q. なんで数回に分けるん?1回でようけ入れたらアカンの?
A. 1番水で糖化を進めて、そのあとの湯で麦芽の層に残った糖を効率よく洗い出すためや。
最初から熱い湯をようけ入れたら、酵素が働く前に潰れてまう。せやから狙いの温度から始めて、だんだん上げていくねん。ただし回数も温度も蒸溜所によってちゃうで。
Q. 「マッシング」と「糖化」は同じ?
A. 入門の解説では、だいたい同じ工程の名前として使われとる。
ただし厳密にいうと、「マッシング」は砕いた麦芽と湯を混ぜて麦汁を取り出すまでの工程ぜんぶ。「糖化」はそのなかで、酵素がデンプンを糖に変える反応のことや。
マッシュタンの中では、糖に変える仕事と、麦汁をこして取り出す仕事の両方が起きとる(こすときに効いとるんが、粉砕で作った殻の層やで)。ふだんは「糖化=マッシング」で覚えて困らへんけど、細かく見たらこういうちがいがあるんやな。
🎁 まとめ:デンプンを糖に変えて、液体で取り出す
糖化は、砕いた麦芽を温かい湯と混ぜて、酵素にデンプンを切ってもらう工程。
製麦の発芽中にも分解はちょっと始まっとる。せやけど酵母が食べられる糖を本格的に作って、甘い麦汁として取り出す主役はこの糖化やねん。
温度が低すぎたら反応が進みにくいし、高すぎたら酵素が働けんようになる。せやからスコッチのモルト蒸溜所では、温度のちがう湯を数回に分けて使う。
ほんで麦汁を煮沸せえへんから、酵素が活性を残したまま次の工程まで付いていく。使い切るための設計やねん。
🗣️ マッサンの一言(独断・偏見・妄想込み)
今日いちばん覚えて帰ってほしいんは、「糖化は酵母のごはんを用意する工程」っちゅうことや。
麦芽のデンプンを、酵母が食べられる糖に変える。その糖がアルコールになって、発酵の香りを生んで、やがて一杯につながっていく。
次にグラスを傾けたとき、63℃の湯気が立つ桶をちょっと思い浮かべてみてな。ほな、乾杯🥂

コメント