「ナッティー(Nutty)って何やろ?」って思って検索してくれたんやな、おおきに。
ひとことで言うたら、ウイスキーの香り・味わいから漂う「ナッツ系」のニュアンスのことや。
アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、マカダミア、ローストピーナッツ、ときにはマジパン(アーモンドの練り菓子)まで、ぜんぶ「ナッティー」の仲間やねん。
コーヒー焙煎したての豆をパリッと噛んだ時のあの香ばしさ、あれを液体で味わえる感じや思たらええ。
ナッティーはシェリー樽熟成、特にオロロソシェリーで仕上げたスコッチやジャパニーズで強烈に立つ香味やねん。マッカラン、モートラック、グレンドロナック、グレンファークラス、余市……名だたる蒸留所のフラッグシップに、ほぼ必ず「ナッティー」の一言が入っとる。それだけ、熟成モルトのキャラクターを語る上で外せへんキーワードいうことやな。
この記事を読めば、ナッティーの正体(成分レベルの話)、シェリー樽との深い関係、ニューポット段階から生まれる意外な事実、代表銘柄の見つけ方、そしてマジパンやアーモンド皮まで細分化される玄人テイスティングまで、ナッツ香のロマンが丸ごと分かるで。ウイスキーの他の用語が気になる人は、用語辞典もチェックしてな。
📖 ひとこと定義
ナッティー(Nutty)いうんは、ウイスキーから立ちのぼる「ナッツ系」の香りと味わいのことやで。アーモンド・ヘーゼルナッツ・くるみ・マカダミア・ローストピーナッツ、そしてマジパンやプラリネ(キャラメル化した砕きナッツ)まで、幅広いナッツ表現をまとめて「ナッティー」と呼ぶんやで。
コーヒーを焙煎した時のあの香ばしい湯気、あれのウイスキー版や思たらイメージしやすい。ナッティーは熟成が進んだモルトウイスキー、特にシェリー樽で長く寝かせたスコッチとジャパニーズで顕著に立つ香味やねん。
💬 マッサンのひとこと:ナッティーはウイスキーの「香ばしさ担当」やな。樽と時間と職人技が全部乗っかった、いわば熟成の勲章みたいなもんやで。グラス傾けてナッツ香がふわっと来た瞬間、「ああ、寝かせてくれてありがとう」って手ぇ合わせたなるで
🌰 ナッティーの正体と、ウイスキー香味ホイールでの位置づけ
ナッティー言うても、実は幅がめちゃくちゃ広いんやで。世界のスクール・オブ・ウイスキーやスコッチウイスキー研究所の香味ホイール(フレーバーホイール)を見てみると、「ナッティー(Nutty)」ちゅうカテゴリーの下に、アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、プラリネ、マジパンあたりが並んどる。バーボンのフレーバーホイールになると、さらに細かく「フレッシュ」「ロースト」「シェル(殻の香ばしさ)」「バター/スプレッド」まで分類されるんやで。同じ「ナッツ」でも、生のアーモンドとローストしたピーナッツと、パリッと殻を割った時の香ばしさは全部違う香り。それを言語化するのが香味ホイールっちゅうわけやな。
面白いのは、香味ホイールが「円」で描かれとる理由やねん。香りっちゅうもんは1つのカテゴリーで完結せず、隣のカテゴリーとグラデーションで繋がっとる。ナッティーの隣には「ウッディー」「シリアル(穀物)」「オイリー」「トースティ」がある。せやからナッティーを感じ取る時、しばしば木のニュアンスやバターっぽさ、香ばしいトースト感と手を繋いで現れるんやで。テイスティングノートに「toasted almond(トーストしたアーモンド)」「walnut cake(くるみケーキ)」なんて書かれとるんは、隣接するカテゴリーとの合わせ技表現なんやねん。
日本人にとって「ナッティー」っちゅう表現はちょっと遠く感じるかもしれん。せやから身近な例え置き換えるとええで。和菓子でいうたら「きな粉」の香ばしさ、「胡桃餅」のコク、栗きんとんの甘い香り。あれもナッツ系の香気成分やねん。あるいは、コーヒー豆を焙煎した瞬間の湯気、パンの耳のトースト香、香ばしいカレーパンの表面……ぜんぶ「ナッティー」の親戚や。ウイスキーからこういう香りが漂ってきたら、「ああ、これがナッティーってやつやな」って気づいたってな。
スコッチウイスキー研究所(Scotch Whisky Research Institute)のフレーバーホイールにも、ちゃんと「Nutty」カテゴリーが独立してあるんやで。ここが大事なポイントやねん。ナッティーは「熟成の副産物」やなくて、独立した1つのフレーバー軸として学術的にも認められとる。※フレーバーホイール=ウイスキーの香りを体系的に分類した円形図。詳しい用語は用語辞典へ。この記事を読み終える頃には、ラベルに「Nutty」の一文字を見つけただけで、蒸留所の狙いや樽の履歴が透けて見えるようになるで。
🛢️ シェリー樽が生むナッツ香 ― オロロソ・アモンティリャード・パロコルタド
ナッティーを語るときに絶対外せへんのがシェリー樽やで。ここが今回の記事の中核パートやで。じっくり読んでな。
シェリー酒っちゅうのはスペイン・アンダルシア地方の酒精強化ワインで、樽の中で長年熟成させる文化がある。シェリー自体が「ナッティー」な酒やねん。せやからシェリーを詰めとった樽にウイスキーを入れたら、シェリーの持っとったナッツ香が原酒に移る、っちゅうシンプルな理屈やねん。ただし現代のシェリー樽ビジネスはもっとややこしい。ほとんどの樽はスペインで意図的にシェリーを詰めて12〜36ヶ月ほど「シーズニング」した「シェリーシーズニング樽」で、ウイスキー用に仕立てられた特注品なんやねん。純粋な使い古しシェリー樽(ボデガから直接来る)は今や希少品やで。
シェリーの種類で、ナッティーの出方が変わる
シェリーには種類があって、それぞれナッティー傾向がちょっとずつ違う。ここを押さえたら通ぶれるで。
①オロロソ(Oloroso)シェリー樽:ナッティーの王様やな。フロール(酵母膜)が消えたあと、酸素に触れながら酸化熟成させるスタイルのシェリー。くるみ・ヘーゼルナッツの厚みのあるナッツ香に、レーズン・ドライデーツ、ほろ苦オレンジピール、クローブやナツメグの深いスパイスがぎっしり乗る。マッカラン12年シェリーオーク、グレンドロナック12年、グレンファークラス12年あたりが代表銘柄。「ナッティー」でイメージするあの厚みは、だいたいオロロソ由来やと思てええ。
②アモンティリャード(Amontillado)シェリー樽:フィノのあとに酸化熟成させる複合スタイル。軽やかなアーモンド香、上品な柑橘、繊細なナッツのレイヤーが同時に立つ。オロロソほどの重厚感やないけど、エレガントさで勝負するタイプ。フィニッシュ用のセカンダリー樽に使われることが多い。
③パロコルタド(Palo Cortado)シェリー樽:オロロソとアモンティリャードのええとこ取りみたいな希少シェリー。ヘーゼルナッツの香りと、わずかな苦味エッジを原酒に織り込む。カスク数が少なくてレア。専門ボトラーがときどき出してくれる特別枠やな。
④フィノ(Fino)シェリー樽:フロール下で熟成させたドライタイプ。塩っけのある「ソルテッドアーモンド」の香りを原酒に与える。グレンファークラス16年オールドフィノなど、実験的なリリースで使われる樽やで。
樽材と使用回数でも、表情が変わる
樽材にも注目してほしい。伝統的なシェリー樽はヨーロピアン・オーク(Quercus robur)で作られとって、これはアメリカンオークに比べて木目が粗い=ゆるいんやで。木目がゆるいと、原酒が樽の木目奥まで染み込みやすくて、木からタンニンや香気成分を抽出しやすい。ヨーロピアンオークはスパイシーで、タンニン多め、そしてナッツ系香が立ちやすい特性を持っとる。※タンニン=渋み成分。渋柿にも含まれとる、あれやで。ウイスキーではキュッと締まる余韻を作る。
ここで一つ大事な話やで。「シェリー樽=すべてオロロソでナッティー」やない。近年はアメリカンオーク(Q.alba)でシーズニングしたシェリー樽も流通量を伸ばしとる。アメリカンオークシェリー樽はバニラの甘さ・トロピカルフルーツ感が強めで、ナッティーはやや控えめ。「シェリー樽風味=ナッツ全開」ちゅう単純な図式やないんが、シェリー樽の奥深いところなんやな。ラベルに「ヨーロピアンオーク・シェリーシーズニング」て書いてある1本は、まずナッティー全開を期待してええ。
そして忘れたらアカンのがリフィルやファーストフィルの話やねん。ファーストフィル・シェリー樽(一度目のウイスキー熟成に使う樽)は樽本来の押し出しが強烈で、色も味も濃く出る。一方リフィル・シェリー樽(二度目以降)は樽の勢いが落ち着いて、蒸留所本来のキャラクターとナッティーが上品にバランスする。※ファーストフィル/リフィル=樽の使用回数のこと。詳しくはファーストフィル用語ページを見てな。実は「リフィルシェリー樽で数年寝かせたモルト」こそ、繊細で複雑なナッティーが立つ、玄人好みの構成なんやで。派手なファーストフィルもええけど、リフィル熟成のじんわりナッティーもぜひ体験してほしい世界やわ。
🎯 シェリー樽タイプ別 ナッティー傾向早見表
| シェリー種 | ナッツ表現 | 代表銘柄イメージ |
|---|---|---|
| オロロソ | くるみ・ヘーゼルナッツの厚み | マッカラン12年・グレンドロナック12年 |
| アモンティリャード | 軽やかなアーモンド・繊細レイヤー | 各種フィニッシュ限定リリース |
| パロコルタド | ヘーゼルナッツ+わずかな苦味エッジ | 専門ボトラーの限定シングルカスク |
| フィノ | 塩っけのあるソルテッドアーモンド | グレンファークラス1986フィノなど実験系 |
※あくまで傾向の目安やで。
樽の使用回数・熟成年数・蒸留所のキャラクターで、ここに書いたナッツ表現の出方は幅広く変わるで。
🔬 ニューポットからナッティーは始まっとる ― ピラジンと蒸留の科学
ここで意外な事実を1つ紹介するで。ナッティーは実は樽詰めする前のニューポット(樽詰め前のできたてスピリッツ)の段階から既に存在しとるんやで。「え、ナッティーってシェリー樽がくれるんとちゃうんか?」って思うやろ?半分正解で、半分は違う。樽が加える部分と、蒸留所が最初から持ってる部分、両方あるんやで。
これを証明した有名な研究がある。2014年、Journal of the Institute of Brewingに掲載された「Origins of the perceived nutty character of new-make malt whisky spirit」(Boothroyd他)っちゅう論文やで。スコットランドの35蒸留所のニューメイクスピリッツを集めて、訓練されたテイスティングパネルで「ナッティー度合い」を評価し、化学成分と相関を取ったんやで。真剣にウイスキーのナッツ香を追いかけた、めっちゃ真面目な研究やで。
結論はこうなんや。ナッティーな新酒には2,5-ジメチルピラジン、2-フランメタノール、安息香酸エチルの3つが多く含まれとって、逆にγ-ノナラクトン(ココナッツ様の甘い成分)が少ないほどナッティーに感じられる、と分かった。特に注目はピラジン系やで。ピラジンは食品でいうたら、コーヒー焙煎香・ローストナッツ・パンの焼き目・ポップコーン香を担う成分で、まさに「ローストされた香ばしさ」の主役やねん。
論文ではさらに、チョコレートモルト(強く焙煎した大麦)で仕込んだスピリッツを分析したところ、案の定ピラジン濃度が高く、ナッティー評価も高かった、って報告しとる。要は「モルト=麦芽をどう処理するか」が、そのまま原酒のナッツ香の下地になっとるっちゅう話やで。樽より前、麦芽の段階から、既にナッティーへの道は始まっとるわけやな。ウイスキーの奥深さがまた1個増えた気がせぇへんか。
蒸留の銅接触とワームタブも効いとる
ほな、蒸留所の設備でナッティーが変わるんか?ちゅう疑問も出てくる。答えは「YES」やで。銅(カッパー)との接触がまず大事なポイントやで。ポットスチルの銅は、蒸気に含まれる硫黄化合物と反応して除去する働きがある。銅との接触時間が長いほど、原酒は軽やかで、フルーティー・エステリーになる。逆に銅との接触時間が短いと、硫黄が残って重厚・肉厚・ミーティー(肉っぽい)・ナッティーな原酒になる。この「重厚系ナッティー」の代表格が、あとで紹介するモートラックやで。あの蒸留所は「ワームタブ」ちゅう昔ながらの木桶コンデンサーを使うとって、銅接触が意図的に少なめ。結果、あの独特の「ミーティー&ナッティー」な原酒ができ上がる、っちゅうカラクリなんやねん。※ワームタブ=蒸気を冷やす螺旋パイプが木桶に浸かった昔ながらの冷却装置。現在スコットランドで14蒸留所しか使うとらん希少設備やで。
もう一つ、麦芽の話に戻る。マッシング(麦芽の糖化工程)で「ウォート(麦汁)」を早く抜くと、濁った麦汁になり、それがナッティーで穀物っぽいスピリッツを生む、ということも研究で分かっとる。つまり、蒸留所が「クリアな麦汁で軽やか路線」と「濁った麦汁で重厚ナッティー路線」を選択しとる、というわけやな。マッカラン、モートラック、グレンドロナック、余市……いずれも重厚系の造りで、そこにさらにシェリー樽が乗って、あの「ぶ厚いナッティー」が完成する。
ここまで来たら分かるやろ。ナッティーは①麦芽の処理 → ②発酵 → ③蒸留(銅接触) → ④樽熟成っちゅう4段階すべてで積み重なる香味やねん。「シェリー樽がナッティーをくれる」だけの単純な話やない。蒸留所の設計思想が、ナッツ香を「育てるか、あえて出しすぎないか」まで左右する。香りって、ただ偶然出てくるだけやなくて、造りの段階からちゃんと席を用意されてるんやなと思える話やで。
🥃 ナッティーな代表銘柄ラインナップ
お待ちかね、ナッティー全開の名銘柄コーナーやねん。全部いっぺんに飲み比べたら、ナッツ表現の幅広さに気絶するで。ここではスコッチとジャパニーズから代表格を紹介するわ。
①ザ・マッカラン12年シェリーオーク:ナッティーの教科書的1本やで。スペイサイド、ヨーロピアンオークのシェリーシーズニング樽で12年熟成。テイスティングノートにはレーズン・ドライフィグ・シェリー漬けプラム・レザー・ジンジャー・トフィーとともに、しっとりしたナッツ香が並ぶ。マッカランは「ジェレスから選び抜いたシェリーシーズニング・オーク樽」を公式に強調する数少ない蒸留所で、そのこだわりが「ナッティー・シェリー・スパイシー」の三位一体を生む。ナッティーを知りたい人が最初に手を伸ばす1本、いうても過言やないで。
②グレンドロナック12年オリジナル:ハイランドの重厚シェリー派。ペドロヒメネスとオロロソのシェリー樽で12年熟成。テイスティングコメントには「ヘーゼルナッツ、クリスマスケーキ、ペストリー、ミルクチョコレート、サルタナ、シナモン・ナツメグ・クローブの温かなスパイス」と、まさにナッティー&シェリーの決定版みたいな表現が並ぶ。マッカランよりナッティーで素朴、ラスティックな味わい、というのが一般的な位置付けや。値段もマッカラン12年より若干抑えめで、コスパ勢のナッティー入門にはこっちも激推しやで。
③モートラック(Mortlach):Diageoが「Dufftownの野獣(Beast of Dufftown)」と呼ぶ、スペイサイドの異端児。1896年から続く「2.81回蒸留」っちゅう複雑な工程と、ワームタブ冷却によって、太くて肉厚な原酒を生む。ここにシェリー樽熟成が乗ると、「肉厚・旨味・ナッツ深み」っちゅう他にない個性が完成する。ナッティーの奥に「meaty(肉っぽい)」「umami(うま味)」が絡んでくる、玄人向けの1本やで。「ナッティーの中でも一癖ほしい」いう人は絶対ハマる。
④グレンファークラス(Glenfarclas):ジョン・グラント家が代々守り続ける、家族経営のスペイサイド蒸留所。全銘柄でオロロソシェリー樽を積極活用する徹底ぶり。フラッグシップの12年は「デーツ・くるみケーキがまろやかに入ってきて、中盤で強烈なオロロソシェリーが押し寄せる」と評される。25年になると「豊かなヘーゼルナッツとダークチョコレート」が真っ先に立って、そのあとオレンジマーマレード、オーク、ほのかにコーヒー、と続く。ナッティーの熟成度合いを飲み比べたい人には、12年→21年→25年の縦飲みが最高の学びになるで。
⑤ニッカ余市シングルモルト(&ディスティラリーエクスクルーシブ「Sherry & Sweet」):北海道余市蒸留所のフラッグシップ。石炭直火蒸留のパンチのある原酒に、シェリー樽熟成が乗ると、ダークフルーツ・ドライフィグ・繊細なスパイスと一緒に温かなナッツ香が立つ。特に蒸留所限定リリース「Sherry & Sweet」は、シェリー樽の甘みと余市らしい海辺の潮っけ、ピートスモーク、そしてナッティーがぶつかり合う濃厚な1本やで。日本のナッティー代表選手として、必ず押さえてほしい銘柄やわ。
⑥番外:ボトラーズのシングルカスク:ナッティー沼にドップリ潜りたいなら、ボトラーズ(独立瓶詰業者)のシェリー樽シングルカスクを探すのが最短ルートやで。シグナトリー、ゴードン&マクファイル、ケイデンヘッド、ケルティックウイスキーカンパニーあたりが、リフィルシェリー樽で15〜25年寝かせた濃厚ナッティーの原酒を、ときどきリリースしとる。ラベルに「Refill Sherry Butt」「Oloroso Hogshead」と書かれとったら、ほぼ間違いなくナッティー全開やで。ホンマは箱買いしたいくらいやで。
⑦シェリーカスクフィニッシュ勢:フル熟成でなく「シェリー樽フィニッシュ」いうやり方で、控えめにナッティーを乗せる銘柄もぎょうさんある。グレンモーレンジィ ラサンタ、バルヴェニー ダブルウッド12年、あたりが有名やな。ex-バーボン樽で長く寝かせたあと、シェリー樽で数ヶ月〜1〜2年フィニッシュ。シェリー樽オンリーの銘柄より軽やかに、しかし確実にナッティーが乗る。「フル・シェリー・カスクは重すぎる」いう人には、フィニッシュ勢がおすすめなんや。
💡 誤解しがちポイント
①「ナッティー=シェリー樽だけの特権」やない。 冒頭で紹介した通り、ナッティーはニューポット段階から既に存在しとる。麦芽の焙煎度合い、麦汁の澄み具合、蒸留での銅接触、ワームタブの使用……蒸留所の設計思想全体が、ナッティーの下地を作っとる。樽はそれをブースト&熟成させる装置なんやで。「シェリー樽入れれば全部ナッティー」は誤解や。
②「シェリー樽=全部ナッティー全開」やない。 シェリー樽にも種類があって、ヨーロピアンオーク×オロロソは濃厚ナッティー、一方アメリカンオーク×フィノやと控えめ塩っけアーモンド、と幅広い。「シェリー樽」の一言でひと括りにせず、樽材とシェリー種のセットで見るクセをつけると、ラベル読みがぐっと楽しくなるで。
③「ナッティー=高級」とは限らん。 グレンファークラス12年やグレンドロナック12年みたいに、5,000円〜7,000円台で強烈なナッティーが味わえる銘柄はたくさんある。「ナッツ香=マッカラン25年」みたいなイメージやなくて、まずは1万円以下の入門シェリー系を1本試してみてほしい。それだけでナッティーの世界は充分に広がるで。
④「ナッティー=古い時代のもの」やない。 最近のクラフトウイスキーやジャパニーズニューウェーブでも、ナッツ香を狙った意欲的なリリースが増えとる。若い蒸留所ほどヨーロピアンオーク新樽やパロコルタドフィニッシュに挑戦しとって、「モダンなナッティー」が続々登場しとる。ナッティーは伝統でもあり、未来でもあるフレーバーなんやで。
✨ 知っとくと通ぶれる小ネタ
◆「マジパン」と「アーモンド皮」まで細分化される玄人テイスティング。 プロテイスターやマスターブレンダーは、ナッティーを「アーモンド」の一言で済ませへん。「Marzipan(マジパン=アーモンドと砂糖の練り菓子)」「Almond skin(アーモンドの皮の香ばしさ)」「Nut oil(ナッツオイルのコク)」「Roasted hazelnut(ローストヘーゼルナッツ)」と、ここまで細かく書き分けるんやで。マジパンは甘くて丸みのある表現、アーモンド皮はほろ苦さと香ばしさを強調する表現。同じアーモンドでも、心臓部と皮でこんだけ表現が変わる。次のテイスティングで「マジパン感が凄いなぁ」ってつぶやいたら、周りの反応が変わるで。
◆ノンチルフィルタード・カスクストレングスはナッティーが濃厚に。 ノンチルフィルタード(冷却濾過なし)&カスクストレングスのボトルは、ナッティーがめっちゃ濃厚に立つ傾向があるんや。理由は化学的にちゃんとある。ウイスキー中の長鎖脂肪酸エステルやプロテインが、冷却濾過でごっそり抜かれてしまうんやけど、これらの成分が油分・厚み・ナッツ香のコクを支えとるからやで。せやから46度以上のノンチル系ボトルは、テイスティングノートに「rich, nutty, oily」と書かれとる率が異様に高い。ナッティー沼に潜りたいなら、まずノンチル・カスクストレングスを1本手に取ってみ。
◆ミズナラ樽もナッティーの立役者になる。 ミズナラ樽で仕上げたジャパニーズは、伽羅・白檀のオリエンタル香が有名やけど、実は「ロースト胡桃」「香ばしい栗」みたいなナッツ表現も密かに立つんやで。北海道産ミズナラは木目が粗くて気密性が低い難物やけど、その分酸素が入りやすく、酸化熟成が緩やかに進むから、シェリー樽と近い「ナッティー系」の香気が育つ、という説がある。山崎ミズナラや白州蒸留所のミズナラエディションを飲む時、伽羅香ばっかり注目せず、「ナッティー成分」も探してみてほしい。それに気付けたら、あなたはもう立派なミズナラ愛好家やで。
🧐 ナッティーを見つけるテイスティングのコツ
ここまで読んでくれたあなたに、実践編もお届けするで。「ナッティーを実際に感じるコツ」、これが分かるとウイスキー飲みが100倍楽しくなる。
まずグラス選びやで。ロックグラスやタンブラーやとナッツ香は逃げる。おすすめはグレンケアン・グラスやチューリップ型テイスティンググラス。口径が細くなっとって、香りをグラス内に閉じ込めてくれる。ここに1杯注いで、まずゆっくり回してから、鼻を近づけて深呼吸。「あ、香ばしい香りが来た」と思たら、それがナッティーの入り口やで。
次に温度。冷たすぎると香りは閉じる。室温(20度前後)で、注いでから2〜3分待つとナッツ香がグラスの中で育つ。急がずゆっくりやで。
そして加水やで。カスクストレングスの55〜60度ボトルは、そのままやとアルコールが強すぎてナッツ香を隠す。スポイトで水を数滴たらして、40〜45度に落とすと、香りがブワッと開く。この「開き方」の変化がめっちゃ面白い。※加水=水を数滴たらしてアルコール度数を調整すること。香りが変わる。
最後に飲む順番。ナッティー全開の1本を先に飲むと、口の中がナッツで支配されて、次のグレンリベットの繊細さが分からんくなる。軽やか系→フルーティー→フローラル→ハニー→ナッティー→シェリー→ピートっちゅう順番が、香味を積み上げていく上での王道やで。ナッティーは「後半戦のヒーロー」やと覚えとくとええで。
飲む時に、目を閉じて、口の中でウイスキーを転がしてみ。「あ、これ、コーヒー焙煎の香りに似てるな」「くるみケーキ食べた時の余韻に近いな」「マジパンの甘さがある」って、身近な食べ物と重ねると、ナッティーは一気に分かりやすくなる。人間の味覚は経験の記憶と結びついとる。ウイスキーを飲む時は、ぜひ「自分の食の記憶」を総動員してほしい。それがテイスティングの醍醐味やねん。
🥃 まとめ
ナッティー(Nutty)は、アーモンド・ヘーゼルナッツ・くるみ・マカダミア・マジパンなど幅広いナッツ系の香味を指す、フレーバーホイールに独立して載る重要カテゴリーやで。
もっとも典型的に生むのはシェリー樽熟成、特にヨーロピアンオーク×オロロソの組み合わせで、マッカラン・グレンドロナック・グレンファークラスがその代表。
そして実は、ナッティーは樽の前、ニューポットの段階から既に存在する。ピラジン系成分・麦汁の澄み方・蒸留の銅接触・ワームタブまで、蒸留所の設計思想が根底で効いとるんや。モートラック、余市、ミズナラ樽まで、その表情は驚くほど多彩やで。
次にシェリー系のウイスキーを開ける時、ぜひグラスに鼻を近づけて、「マジパン、ヘーゼルナッツ、ローストくるみ……」と自分の言葉で表現してみてほしい。言語化できた瞬間、グラスの中の世界がもう一段深く見えてくる。乾杯したいなぁ、ロマンやろ?
📖 この記事に出てきた用語(タップで辞典へ)
分からん言葉があったら、ここから用語辞典でサクッと確認してな。
ピート/ピーテッド…泥炭(ピート)で麦芽を燻して付ける、焚き火や正露丸みたいなスモーキーな香りのことや。
カスクストレングス…樽から出したまま、加水でうすめてへん高い度数のボトルのこと。香りも味も力強いで。
ノンチルフィルタード…冷やしてゴミを濾す工程をあえてやらん造り。香味成分が残って、味に厚みが出やすいんや。
シェリー樽…スペインの酒精強化ワイン「シェリー」を寝かせとった樽。レーズン・黒糖・ナッツの甘い香りが付くで。
オロロソ(シェリー樽)…シェリーの中でも濃厚タイプ。ドライフルーツ・ナッツ・黒糖みたいなコクのある甘さが特徴や。
PX(ペドロヒメネス)…シェリーで一番甘いタイプ。レーズンや蜜みたいなとろっとした極甘の風味が付く樽や。
フィノ(シェリー)…シェリーで一番辛口・ドライなタイプ。ナッツやアーモンドの香ばしさが出るで。


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